音声入力を一度試して、「誤変換だらけで、結局手で直すなら打ったほうが早い」とやめてしまった人は多いと思います。筆者も、メールの文面をそのまま声で書こうとしたときは、同じ感想でした。
ただ、毎日パソコンの仕事で音声入力を使い続けて分かったのは、音声入力は「使う相手」で評価が変わるということです。人に送る文章を声で完成させようとすると微妙ですが、AIに渡す文章を声で話すのは、はっきり楽です。この記事では、その向き不向きを筆者の実感として整理します。
声で書くのではなく、声で「AIに話して」、文章はAIに作らせる。この順番にすると、音声入力の評価は変わります。
先に結論。声は「AIに渡す文章」に使う
| やろうとすること | 音声入力との相性 | 理由 |
|---|---|---|
| AIへの相談・依頼を話す | とても良い | 話が雑でもAIが意図を汲んでくれる |
| 考えごとを声でメモに出す | 良い | あとでAIに整理させればよい |
| 短い返信を声で入れる | まあまあ | 内容が決まっていれば速い |
| メールの本文を声で完成させる | 微妙 | 推敲と誤変換修正で結局手間がかかる |
まだ音声入力もChatGPTも試していない人は、先に入口の記事から読んでください。この記事は「一度試したが、いまいちだった」人に向けて書いています。
先に読む記事
なぜAI相手だと、雑に話しても通じるのか
人に送る文章は、誤字も、回りくどさも、言葉足らずも許されません。だから声で入れても、結局じっくり直すことになります。
一方、AIに話しかける文章は、きれいである必要がありません。筆者が実際に使っていて感じるのは、次のような話し方でも、AIはこちらの意図をかなり汲み取ってくれるということです。
- 「えーと、あれだ、先週の、あの資料の件なんだけど」のような前置きや言いよどみ
- 同じことを2回言ってしまう重複
- 途中で気が変わって「やっぱりこうして」と上書きする指示
- 主語が抜けている言葉足らずの説明
つまり、AIが相手なら「うまく話す」必要がそもそもないのです。誤変換が多少あっても、文脈から正しく解釈されることがほとんどです。音声入力が苦手だと感じていた原因が、実は「送る相手が人間だったから」だった、というのが筆者の実感です。
人に送る文章を声で完成させようとすると、楽にならない
逆に、メールやチャットの返信文そのものを音声入力で書くのは、使っていて微妙でした。理由ははっきりしています。
- 相手に届く文章なので、誤変換をひとつずつ直す必要がある
- 話し言葉のままでは送れず、結局書き言葉への推敲が必要になる
- 敬語や言い回しを声で整えながら話すのは、頭の負担がかえって大きい
例外はあります。頭の中で返す内容が決まっているときや、「了解しました。明日10時に伺います」のような短文なら、声で入れたほうが速いこともあります。ただ、それは音声入力の主戦場ではない、というのが使い続けた結論です。
仕事のパソコンでの使い分け
筆者はパソコンでの仕事を中心に音声入力を使っています。使い分けはシンプルで、「AIに向かう入力は声、人に向かう仕上げは目と手」です。
| 場面 | 使うもの |
|---|---|
| ChatGPTへの相談、依頼、背景説明 | 声で話す |
| 資料を読んで思いついたことのメモ | 声で出して、あとでAIに整理させる |
| メール・チャットの返信文の作成 | 声でAIに事情を話して下書きを作らせる |
| 下書きの仕上げ、名前・日付・数字の確認 | 目で読んで、手で直す |
| 送信 | 必ず自分で読み直してから |
ポイントは3行目です。メールを「声で書く」のではなく、「声で事情をAIに話して、文章はAIに作らせる」。出てきた下書きを自分の言葉に直して送る。この経由のひと手間で、声の楽さと文章の質が両立します。
なお、声で話す内容に、氏名や連絡先、取引先の名前、社外秘の情報を入れないのは、キーボードのときと同じです。個人情報保護委員会も、生成AIサービスへ個人情報を入力するときの注意を呼びかけています。
筆者のやり方。ボタン1つで話しかけて、仕上げは目と手で
参考までに、筆者の普段の流れを紹介します。道具は使っていますが、流れ自体は無料の標準機能でも同じように作れます。
- 1. マウスのボタンに音声入力の呼び出しを割り当てておく(筆者はIST Proのボタン5にF12)
- 2. ボタンを押して、ChatGPTやAIチャットに用件をそのまま話す。言いよどんでも気にしない
- 3. 「箇条書きで」「メールの下書きにして」と、答えの形だけ指定する
- 4. 出てきた文章を目で読み、名前・日付・数字と言い回しを手で直す
- 5. 人に送るものは、必ず自分で読み直してから送る
音声入力の呼び出しを楽にする道具や、話し方のコツは、それぞれ別の記事に詳しくまとめています。
この流れを作る記事
これから試す人は、無料機能とAIチャットの組み合わせから
この使い方を試すのに、新しい買い物は必要ありません。WindowsならWindowsキーとHキー、Macなら設定で音声入力をオンにすれば、今日から声でAIに話せます。マイクも、最初はパソコン内蔵のもので十分です。聞き取りが悪いと感じてから、マイク記事を見てください。
音声入力に一度がっかりした人ほど、「人に送る文章を書かせる」のをやめて、「AIに渡す文章を話す」使い方を1回試してみてほしいと思います。評価が変わるはずです。