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音楽制作の仕事はAIでどうなる?97%が区別できない時代の現実

1年前は聴けば分かったAI音楽が、いまはリスナーの97%が区別できません。先に崩れるのは「聴かれ方」ではなく「作る仕事の値段」。職業別先読み第2弾。

自宅スタジオでパソコンの画面を見つめる50代の音楽制作者

少し前まで、AIが作った音楽は聴けば分かりました。どこか平板で、「ああ、AIっぽいな」と。その感覚はもう通用しません。2025年11月に大手音楽配信サービスDeezerが9,000人のリスナーに行った調査では、97%の人が、完全AI生成の楽曲と人間が作った楽曲を区別できませんでした。

この記事は職業別先読みシリーズの第2弾です。音楽制作を題材にしますが、音楽に関わりのない人にも読んでほしい内容です。ここで起きていることは、デザイン、映像、文章など「何かを作って納品する仕事」すべての先行例だからです。2026年6月13日に確認したDeezerとCISAC(著作権協会国際連合)の公開情報をもとに整理します。

先に崩れるのは「聴かれ方」ではありません。「作る仕事の値段」です。

いま起きていること。アップロードの44%がAI生成

Deezerの2026年4月の発表によると、同サービスに1日にアップロードされる新曲のうち、約44%にあたる約75,000曲が完全AI生成です。2025年1月時点では約10,000曲、全体の10%でした。つまり1年あまりで、10%から44%まで増えました。

時期完全AI生成曲の割合(Deezer日次アップロード)
2025年1月約10%(約1万曲/日)
2026年4月約44%(約7.5万曲/日)

そして冒頭の調査です。リスナーの97%が、AI生成曲と人間の曲を区別できない。つまり「作品の供給量が爆発的に増え、聴き手はもう見分けられない」という状況が、すでに数字で確認されています。

経済への影響も試算が出ています。CISACが2024年12月に公表した世界規模の調査では、2028年までに音楽クリエイターの収益の24%がリスクにさらされ、AI生成音楽の出力市場は約160億ユーロ規模に成長するとされています。

正確に読む。人の音楽が聴かれなくなったわけではない

ここで、数字を正確に読む必要があります。Deezerによれば、AI生成曲の再生シェアは全体のわずか1〜3%です。しかもAI曲の再生の最大85%は、再生数を稼ぐ不正(ストリーミング詐欺)として検出され、収益分配から除外されています。

つまり、「人々がAIの音楽ばかり聴くようになった」わけではありません。リスナーが聴いている音楽の97〜99%は、いまも人間の作品です。この点で「音楽家はもう終わり」という言い方は事実に反します。

では何が問題なのか。聴かれ方より先に、作る仕事の値段が崩れていくことです。ここからは構図の解説、編集部の見立てです。

構図。最初に削られるのは「音楽という作業」を売る仕事

音楽で収入を得る方法は、大きく2つに分かれます。「自分の作品を聴いてもらう」仕事と、「依頼に応じて音楽を作って納品する」仕事です。崩れ始めているのは後者です。

企業動画のBGM、店舗用の音源、広告音楽、ストック音源。これらの発注者が求めているのは「誰が作ったか」ではなく「目的に合う音」です。そして97%の人が区別できない品質のものが、ほぼ無限に、ほぼゼロ円で供給されるようになりました。発注者が違いを聴き分けられない以上、「人間が時間をかけて作りました」は価格の根拠になりません。制作の工数を対価にしてきた受注仕事から、単価が崩れていきます。

これは税理士の記事で書いた構図と同じです。仕事を奪うのは厳密にはAIではなく、AIで数分の一のコストになった供給と、それを使う側に回った同業者です。

残るもの。人として聴かれる、完成品を売る、全体を握る

一方で、構図上崩れにくい場所もはっきりしています(編集部の整理)。

残るものなぜ残るか
人として聴かれる関係ライブ、ファンとの関係。聴き手は「誰の音楽か」にお金を払っている
完成品・作品を売る立場作品、ブランド、世界観。工数ではなく、できたものの価値で売る
全体を握る役割音楽監修、選曲、ディレクション。無数の選択肢から「これだ」と決めて責任を持つ

注目すべきは、AIで音楽が無限に作れる時代になるほど、「選んで決める」仕事の価値が上がることです。素材が無料に近づくほど、何を選び、どう組み合わせ、何にゴーサインを出すかという判断、つまり全体を握って責任を取る役割に価値が移ります。これは当サイトの「残る仕事の3原則」そのものです。

音楽以外の人へ。これは制作系すべての先行例

音楽は、生成AIの品質向上が最も速く進んだ分野のひとつで、いわば未来を先に見せてくれています。「依頼を受けて、時間と工数をかけて作り、納品する」形の仕事、つまりデザイン、イラスト、文章、写真、映像、そして一部のプログラミングにも、同じ順番で同じ構図が来ます。

教訓ははっきりしています。工数を売る働き方は、AIが工数を圧縮するほど値段が崩れる。先読みする人は、時間の切り売りから、完成品・作品・関係を売る側へ、そして選んで決める側へ、軸足を移し始めています。この「時間を売るから完成品を売るへ」という転換は、次の記事で正面から扱います。

打ち手

  • 1. 制作に関わる人: AIを自分の制作工程に入れて、速度とコストで負けない側に回る
  • 2. 自分の名前で積み上がる資産(作品、ファン、ブランド)を作り始める。受注をこなすだけでは資産が残らない
  • 3. 「選んで決めて責任を取る」監修・ディレクション側の経験を意識して取りに行く
  • 4. 音楽以外の人: 自分の仕事の中の「制作受注」的な部分(時間と工数を売っている部分)がどれだけあるか点検する

AIをまだ使ったことがない人は、まず道具として触るところからです。キーボードが苦手でも、声から始められます。

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この記事で確認した出典

#仕事の先読み#音楽制作#クリエイティブ

編集部より

大人のこれから帖編集部は、AIやネット情報に慣れていない大人世代にも伝わる言葉で、暮らしの選択肢を整理します。